ジゴロ大石 
「英二」
「んー?」
 大石に呼ばれて顔を上げると、いきなりやわらかいものが唇を覆った。
 チュッ、と音を立てて離れたそれが大石の唇だと分かるのに要した時間は、約3秒。
 キスされたんだと理解するのに、プラス5秒。
「……にゃ、にすんだよっ!」
 俺は顔を赤くして、とっさに手の甲で唇をかばう。
「なにって、キス?」
 大石はなにか悪いことしたのか?とでも言いたげに、首を傾げて俺を見つめる。

 この天然王子はなに考えてんだ?

 俺は恥ずかしいは一人平然としてる大石が腹立つはで、勢い任せに胸倉をつかんだ。
「今、部活中だろっ!キスするとこじゃねぇじゃんっ!」
 大石だけに聞こえるように小声で怒鳴ると、大石は「ああ」と忘れてましたといわんばかりに大きく頷く。
「そういえばそうだったな」
 にっこりとさわやかに笑って、すっとぼけた口調で言いやがる。
「そういえばじゃねぇって!にゃんでこんなことすんだよっ!」
「んー…したかったから、かな?」
「………っの、バカっ」
 精一杯の悪態も、真っ赤な顔して涙目になってちゃ効果もなく。
 部活が終わるまで口をきいてやるもんかとシカトしてたら、終わった後の部室で機嫌をとられた。
 「分かったから、許すからっ」と言質をとられるまで、泣かされる羽目になったのだった。



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メモ帳に残ってた2007.4.19の日記に書いてたらしいログ。やっぱり私の書く大石はジゴロなんだね、ウン。
部室で機嫌取り…しかも泣かされるって…この頃の自分に「書け!」といってやりたい。
01/30(00:22)



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