ホワイトデー 
「英二、これ…」
 学校からの帰り道。
 人気がなくなったのを見計らって、大石が恥ずかしそうにコートのポケットから、青いリボンのついた掌より少し大きめの箱を俺の目の前に出す。
「ん?」
「今日ホワイトデーだろ?だから、バレンタインのお返し。クッキーだよ」
「えーっ!本命にはマシュマロだろっ!大石、俺のこと本命じゃねーの?!」
 なんて、わざと怒ってやる。
 ホントは、ホワイトデーに本命にやるものがクッキーかマシュマロかなんて知らない。
 でも、恥ずかしそうに差し出してくる大石の顔が、なんか可愛くてドキッとさせられたから、ちょっとしたイタズラを仕掛けたくなった。
「そ、そうなのか?お店には本命クッキーだって書いてあったんだけど…マシュマロだったのか……」
 本気で「どうしよう…」って悩みこんじゃいそうになってるから、差し出されてたクッキーの箱を取り上げて種明かしをしてやる。
「バーカ、冗談だよ。どっちが本命かなんてホントは知らないって」
「ひどいな、英二」
 ホッとしたように大石が笑うから、怒ってないんだって分かった。
「ちょっとからかっただけだって。ごめんな」
 大石の腕に自分のを絡めて、外だけど、ちょっとだけ普通のカップルみたいにくっついてみた。
「これサンキュ。なぁ、一緒に食べよ」
「じゃあ、うちに来るか?」
「行く!」
 行き先が決まって、そっと腕を離した。
 ホントは離したくないけど、誰かに見つかったらって思うと、これ以上は家についてからいくらでもできるし。

 早く家に行きたい。
 んで、思いっきりイチャイチャしたい。

 言葉にはしない分、強く願ってしまった。
 気持ちを落ち着けて、さりげなく距離をとったのに、大石がそれを縮めてくっついてくる。
 手を握られて、そのままコートのポッケに一緒に入れられてしまった。
「お、大石っ」
 外なのに!
 誰かに見られたらどうすんだよっ!
「コートで見えないようにするから、このまま家に行こう」
 焦る俺をよそに、大石はぎゅっと手を握ってくる。
「…いいの?」
 俺の気持ちを読んで、俺のためにしてくれたんじゃないか、上目遣いに聞いてみる。
「英二がイヤなら離すよ」
「ううんっ!イヤじゃないっ!」
「じゃあ、このまま」
「うん」
 大石がうれしそうに笑った。
 俺もうれしくて、笑い返した。


 いつまでも、こうしていられたらいいな…

 大石と一緒に、いられたらいいな…


「家に着いたら、いっぱいイチャイチャしような」
 素直にそういったら、大石は顔を真っ赤にして、きょろきょろと辺りを見回す。
「うん」
 小さい声で頷いて、大きな歩幅で歩き出した。
 それにどんな意味がこもってるか、俺にはちゃんと分かってる。
 俺もおんなじ気持ちだから、それにあわせてついていく。

 いつもより早く家に着いたのはいうまでもない。



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ホワイトデーSSSです。
せっかくのホワイトデーなので、ちょっと上がってまいりました。
つか、ホワイトデーとか関係ないSSSのような気がします…気のせいじゃないと思う。
こんなんですみません。
その前に、誰も見てくれなかったらどうしよう…
Y(>ω<、)Y ヒェェーーッ!
03/14(15:56)



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